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1953年7月5日天気晴れ 私はあなたにこれから一切のことを隠し隔てなくお知らせいたしましょう。ぼくがこ れを始める動機はアンネという一少女が自分のありのままを正直に書いているのを見 て、心を動かされたことをあなたにお知らせいたしましょう。今まであなたを粗末に していたことをここにあつくお詫びいたします。 毅一郎より 僕は昨日寝るときに母に心にもない放言をいたしました。母は僕があの言葉をどんな に悔やんだかは想像することもできないでしょう。 突然、こういうことを言っても、あなたには僕の家庭のことをちょっともご存じない からおわかりにならないと思います。 僕のうちはあばあさんと父・母に姉弟五人の合計八人暮らしです。あばあさんが今年 七十歳ぐらいで、僕の父の母にあたる人です。僕はあまり彼女を好きではありませ ん。いやちょっとも好きではないのです。口がやかましくてちょっとも実行力のない 人です。いつから始終顔をしかめて横目で始終僕たちを見ています。ちょっとでも働 くとぶつぶつ言って、すぐ腰が痛いといって横になってしまいます。 僕が一番彼女を見損なったのは、こういうことです。食べ物の多いほうを僕たちは取 るくせがあります。それを彼女はいつも口汚くののしるのですが、自分はいつでも一 番多いものを取ります。老人に動物性の蛋白質がよくないのも知らないで本当に可哀 相な心の狭い老人です。 あまり長くなるので今日は僕のそばだけを紹介します。彼女は今僕の脇でおかしな格 好で昼寝の最中です。あとの人々についてはまたあとで。さようなら。 毅一郎より。 |