突然 舞台に取り残されたのね 独り
あなたが去ってしまった舞台の
ぽっかり空いた暗闇に向かって
わたしは一体どんなセリフを言えばいいの
「好きなのよ」と呼びかけてみても
もうあなたの答えは返って来ないというのに
突然 舞台に取り残されたのね 独り
主役が降りてしまった舞台の
涙ににじんだライトの中で
わたしは一体どう振る舞えばいいの
「さよなら」と呼びかけてみても
もうあなたの返事は返って来ないというのに
突然 舞台に取り残されたのね 独り
筋書きが変わってしまった舞台の
すっかり白けた客席の前で
わたしは一体どうつくろえばいいの
「いつかまた」と繰り返してみても
もう決してあなたは帰って来ないというのに
(1975.2.16)
こんなにきつく抱きしめてみても
なぜかむなしい今夜の君は
どこにいるのさ本当の君は
どこにあるのさ君の心は
信じ、信じ、信じた愛だっただけに
どんな小さな裏切りにさえも
ぼくの胸はたちまち傷つくのさ
こんなに強く抱き寄せてみても
なぜか遠い今夜の君は
どこへ行ったのさ昨日の君は
どこへ捨てたのさ澄んだ瞳を
愛し、愛し、愛したぼくだっただけに
どんなささいな偽りにさえも
ぼくの胸はたちまちはじけるのさ
あんなにきつく抱きしめたあとも
なぜかうつろな今夜の君は
どこへ消えたのさ本当の君は
どこへいるのさぼくの”お前”は
誓い、誓い、誓った愛だっただけに
どんなわずかなすきま風にさえも
ぼくの胸はたちまち凍えるのさ
(1974.1)
やることなすことすべて裏目で
ついてないんだこの俺は
田中さんじゃないけれど
出張すればデモに合い
家に帰れば総スカン
ホントにホンマに
どないなってんねん
泣けてくるわ
何をやってもすべて裏目で
運がないんだこの俺は
田中さんじゃないけれど
トイレに入れば紙がなく
コーヒー沸かせば砂糖切れ
ホントにホンマに
どないなってんねん
泣けてくるわ
一から十まですべて裏目で
貧乏神だよこの俺は
田中さんじゃないけれど
お高く止まれば煙たがられ
低く構えりゃ無視される
ホントにホンマに
どないなってんねん
泣けてくるわ
(1974.1.17)
お前十でおれ十二
腕白小僧で通ってた
あんな頃からこのおれが
お前に惚れていたなどと
今さら誰にも話すなよ
お前十七おれ十九
集団就職町へ出て
スシを握っていたおれが
お前に恋文書いたなど
今さら誰にも話すなよ
お前十八おれ二十歳
おやじに叱られ腹立てて
ふて寝していたこのおれに
お前が逢いに来たなどと
今さら誰にも話すなよ
お前二二おれ二四
歩き疲れて公園で
あんな夜更けにこのおれが
一緒になろうと言ったなど
今さら誰にも話すなよ
お前二四おれ二六
四畳半一間のアパートで
無事に生まれた子を抱いて
お前に頭を下げたなど
今さら誰にも話すなよ
(1977.1.22)
心をつかみたい 君の心を
この胸の中にしっかりと
昼も夜もそう願っているのに
揚羽のようにやすやすと飛び立っていく君
ああ君はつれない僕の蝶々
ぼくを惑わせ引きつける
心をつかみたい 君の心を
この胸の中にしっかりと
寝ても醒めてもそう祈っているのに
蜉蝣のようにたちまち消え去っていく君
ああ君はつれないぼくの女王
ぼくを引きつけ惑わせる
誰かが好きになりそうな予感がしてたんだ
だから追ったのさ後を あなたの後を
春が間近い北国の冷たい空気にも
ぼくの心を燃えさせる何かがあったのか
追いついてあなたの黒い瞳見たとき
ぼくの心は愛の予感に満たされたのさ
誰かが好きになりそうな予感がしてたんだ
だから出たのさ旅へ ひとりの旅へ
雪解け音する北国の静かなあの夜に
二人の心を結ばせる何かがあったのか
心開いたあなたの素敵な笑顔見たとき
ぼくの心は愛の喜びで溢れたのさ
いつからかしら思い出せない
他人(ひと)の車とわかっていても
爆音するたび窓辺に走る
週に一度のあなたの迎え
あてのない日も待ってるの
ほんとうよ 悲ししいわ
いつからかしら思い出せない
ひとりの夜とわかっていても
暗くなったら体が火照る
週に一度の土曜の八時
あてのない夜も燃えてるの
ほんとうよ せつないわ
(1974/7/30)
雪が降っている 音もなく静かに
去ったあなたの足跡 ひとつひとつ消していく二度と会えない 別れのはずだけに
いつまでも面影消えない 雪の夜の別れ
抱きしめてもう一度 そっとささやく窓辺に
白い雪のきららが 静かに降り積もる
雪が降り続く 音もなく静かに
去ったあなたの足跡 いつの間にか消していく自分で選んだ 別れのはずなのに雪が降り続く 音もなく静かに
いつまでも涙止まない 雪の夜の別れ
くちづけてもう一度 そっとたたずむ窓辺に
白い雪の明かりが ほのかに灯を点す
去ったあなたの足跡 もう何処にも見えない二度と会わない 誓いのはずだけど
何故かしら心乱れる 雪の夜の別れ
会いたいのもう一度 そっと寄り添う窓辺に
白い雪のとばりが 音もなく舞い降りる
会いたいのもう一度 そっと寄り添う窓辺に
白い雪のとばりが 音もなく舞い降りる(1976/3/24)
雨に濡れてた石畳(1975/7)
赤いコートの君だった
巡り合うのが運命なら
別れゆくのもまた運命
運命哀しくなお更に
燃えて燃えて
燃えて身を焼く恋だった肩抱き寄せた傘の中
黒い瞳の君だった
恋に燃えるが女なら
恋に泣くのもまた女
それがいとしくなお更に
燃えて燃えて
燃えて身を焼く恋だった雨が止んだらもう夜明け
涙浮かべた君だった
涙拭くのが男なら
隠れ泣くのもまた男
思い切れずになお更に
燃えて燃えて
燃えて身を焼く恋だった
初めて会った頃のことを
今になって思い出したよ
長い年月の積み重ねの下に
眠っていたアルバム
今も昨日のことのように鮮やかなのは
君の恥ずかしそうな笑顔
そうさ白い歯がまぶしかったあの頃の君の言葉を
今になってかみしめているよ
長い年月の積み重ねの下に
埋もれていた宝石
今もきのうのことのような胸を打つのは
君の飾り気のない言葉
そうさ真心がこもっていた
夜が責める たった一度の
甘いくちづけ 過ぎたあやまち
今は何もかも忘れて この愛だけに
わたしの心を奪われたいのに闇に浮かぶ 夏の海辺
風のいざない 熱いささやき
今は何もかも捨てて この人だけに
わたしのすべてを捧げたいのに夜にうずく 古い傷痕
甘い誘惑 遠い潮騒
今は何もかも忘れて この時だけに
わたしの心を縛られたいのに
(1975/5)