Music,Drama & Cinema
(opened on October 10,1998)
(2000/12/24掲載)
パフォーマンスが始まるやいなや、something specialなものに、出会ったときの興奮を覚え、その興奮は最後まで続いた。すさまじいエネルギーを発散する舞台に、稲妻に打たれたように感応し、思わず身を乗り出して舞台を見守った。
冒頭詩が読み上げられる。太陽のもたらす生命のエネルギーへの賛歌。舞台奥に作られた三つの大型スクリーンに映し出される赤いエネルギーを現す映像を背景に、Aホールの大舞台に繰り出してくる、男女のダンサーは、上半身は、微動だにしないように、気をつけの姿勢を保ちながら、長い両足を、軽々と宙に舞わせ、複雑なステップを踏み、少しの狂いもなく力強よく、歯切れのいいタップを鳴らす。ハード・シューズで舞台を踏む全員のタップが驚くほどぴたっと合う。
当初7分間の幕間ショーだったダンス・ナンバーを発展させて、1994年にダブリンに登場したというが、激しいショウビジネスの世界を生き残り、4大陸の100を越える都市で熱烈に迎え入れられているというのも、頷ける。タップダンスを主体にし、中にスパニッシュ・ダンス(フラメンコ)も織り交ぜるダンスが、どれも、驚くほどレベルが高い。次々に趣向を変えて演じられるので、次にどんなダンスが繰り広げられるだろうかと期待は高まり、始まるや、ため息をつきながら見守ることになる。
シングルやペアで踊るもよし、チームで踊るもよし、世界中から粒ぞろいのダンサーを選りすぐった感じさえする。男女のアイリッシュ・ダンスのトップダンサーであるブランタン・デ・ガリとジジョアン・ドイルがペアで踊る激しく、切れ味鋭い踊り。フラメンコのマリア・パヘスの、その長くしなやかな腕と豊満な体を駆使しての、エキゾティックな迫力ある踊り。タップ・ダンスの極限を見せつけるようなロオンダス・ヘンドリクス、トビー・ハリスらの信じられないような複雑きわまるリズムの踊り。
音楽もいい。エンヤにも繋がるような素朴なアイルランド系の音楽なのだが、哀愁を帯び、しみじみと胸にしみる。12人の編成になる楽団も実に芸達者でダンスとよく拮抗している。バイオリンを弾く女性は、舞台にまで出てきて、ダンサーと一緒に踊ったり、歩き回りながら自在に弾きこなす。アコーディオン、縦笛、ヤギ革製のアイルランド伝統楽器バゥロン(シンバリンと太鼓の間の子ような楽器)、サキソホンなどの独奏もある。ギター(電気、アコースティック、クラシック)、キーボード、ドラムやパラボラアンテナのような大きな打楽器もある。ドラマーは両手両足で、複雑なリズムで大小の太鼓や打楽器を鳴らす。
コレット・トッドやモーガン・クローリーらの歌手の歌唱力も、なかなかのもの。声も美しい。会場が広すぎて、スピーカーがやや籠もりがちだった点が気になった。
シーン1の生命の源、太陽から始まって、シーン12の故郷アイルランドに至るまで、アイルランドの歴史を辿るような構成になっている。最後に全員が登場して「民族はひとつ」力を合わせれば強くなれると、白熱の踊りと音楽を展開する中でフィナーレを迎える。
人間の想像力・創造力のすごさ、身体能力の極限を目の当たりにして、人間への信頼感を更に深める一夜となった。
絶対お勧めのショーだ。
(2000年12月24日記す)
Music,Drama & Cinema
トップへ
総目次へ