編集者のつれづれノート
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(2000/2/15掲載)
画家加藤一氏の訃報

 今日(2000年2月14日)、2月11日付の朝日新聞を見たら、訃報欄に加藤一氏(75歳)の訃報が載っていた。その同じ11日、近くの古本屋で、加藤一の「風に描く 自転車と絵画」(文芸春秋社 1987年)というエッセイ風自伝をたまたま見つけだし、著者が、国体や競輪で自転車競技者として活躍した後、渡仏して画家に転身した面白い経歴の持ち主であるということと、表紙になっている、抽象画に捨てがたい味があるということで興味を引かれ、買って帰り、昨日、前書きの「アトリエから」と、後がきの「再びアトリエから」を読んだところなのだ。

 その「アトリエから」の中で、著者は、1987年東京で開催する個展に向けて、高さ2メートル長さ12メートルの長大な作品に取り組んでおり、今アトリエには、それを三分割して三面の壁に立て掛け、描き手の私は逃げ場もなく絵に取り囲まれた格好であると述べている。描くのは、疾駆する風、透明な翼と化し、画面いっぱいに重なり合いひしめき合って疾走する、そんなイメージを、色彩は一切使わず、白と灰色だけの単彩で、先端3ミリ、極細の面相筆で描くというのだ。タイトルは「風の化身」。
 このあとがきは、1986年11月の執筆となっているので、著者はまだ60そこそこだったはすだ。おそらく、その絵は完成したのであろうし、ひょっとすると、表紙の絵は、その作品のイメージに近いのかも知れない。
 自転車で疾走するときの風にだわり、それを描くこと、つまり、「風を描く」ことが終生のテーマだったようだ。朝日新聞には、「自転車競技者ならではの、流れるような線を駆使した独自の抽象画がパリ画壇で注目された」と紹介している。
 亡くなられたのは、10日午前9時30分という。亡くなられた日と、私が加藤一という名を知り、その書を買った日とがほとんど同じという偶然が起こっていたのだ。合掌。



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