編集者のつれづれノート
異次元の二人
(2009/10/15掲載)
今年(2009年)10月8日〜11日に行われたゴルフのプレジデンツカップ(米国選抜と欧州を除く世界選抜との戦い、サンフランシスコ、ハーディング・パーク、7137ヤード、パー71)で、18歳になったばかりの石川遼に3敗した49歳のペリーは、「すごみを感じた。ウッズと同じ異次元の世界にいる選手のようだった」と述べている。ペリーは米ツアー14勝の実力者である。この結果、石川は、世界選抜のなかで、アーニー・エルスと並んで、最多の3ポイントを上げたのだ。
世界選抜の主将で、石川を抜擢推薦したゲレグ・ノーマンも「あの若さで重圧を乗り越え、ここまで戦うことがどれほどすごいことか」と絶賛した。(朝日新聞夕刊2009/10/13)
石川遼が、15歳高校一年生でプロゴルフの大会に初出場し、初優勝の快挙を達成した際にも、この欄で取り上げ(「石川遼、男子ゴルフツアーに初出場で初優勝の驚異})、「男子ゴルフ界にも期待の星の登場である。是非とも、ウッズ並みのスパースターに育って欲しいし、育てて欲しいものだ」と書いたのたが、その後、まさしくウッズ並みの異次元の強さを発揮し、若干18歳で、現時点で日本男子プロゴルフの賞金獲得額のトップを走っているのだ。今日からの日本オープンゴルフ、どういう結果を出すか、わくわくする。昨年は2位だった。同じく弱冠23歳で、賞金ランキングで200万円差の2位に付けている池田勇太との戦いも、興味津々だ。
ところで、異次元の二人目は、池田勇太にあらず、囲碁界の井山裕太八段のことである。
現在、囲碁界の覇者というにふさわしい張名人(7大タイトルのうち5冠を保持)と名人位をかけて戦っており、第4局まで、3勝1敗と名人を角番に追い込んでいるのだ。昨日から今日にかけて、第5局が打たれているが、ひょっとすると弱冠20歳の最年少名人が今日中にも誕生するかもしれないのだ。
異次元というのは、昨年も名人位に挑戦し、3勝4敗で惜しくも名人位獲得はならなかったが、今年はリーグ戦を8戦全勝で勝ち抜き、連続挑戦権獲得を達成したうえ、これまでの4局の戦いぶりが、見事の一語につきるからである。
3つの劫を同時に争うなど、複雑怪奇とも見える局面が、毎局生じるのだが、一歩もひるむことなく、第1局だけは半目負けしたが、その後は、3局とも、中押し勝ちで勝ちきっているのである。張名人に読み負けるどころか、その上を行っているように、素人目にも見えるのである。これまでの碁とは異次元の世界で戦っているようで、これなら、中国や韓国の世界のトップクラスとも五分に渡り合えるだろうと思わせるものを持っているのだ。
この井山さんと、今年「藤沢秀行を偲ぶ会」(7月24日)で話す機会があった。
井山さんには、お師匠の石井邦雄九段をポーランドでお迎えしたことから、年賀状をこれまでやりとりしていて、最初は、井山という頼もしい弟子に注目して欲しいから始まって、最近では、「師弟の立場、逆転、お師匠さんに教えて貰えなくなりました」などのユーモラスなコメントを貰っていることを伝え、今期の名人位挑戦を最終局を待たずに決めていたところだったので、「昨年は実に惜しかったが、今年は、是非、名人位を取ってください。がんばってください」と言ったところ、力強く「頑張ります」との答えが返ってきた。本当にさわやかで好感の持てる若者だった。
その後、秀行名誉棋聖のご子息である藤沢一就八段と、井山さんの強さを話題にしたところ、彼も井山さんは、中国・韓国の強豪に通ずるものを、日本の若手のなかでは唯一持っていると見ているということだった。
石川遼が、ゴルフ界のブームを巻き起こしているように、井山八段にも、最年少名人になってもらい、、囲碁ブームを巻き起こして欲しいものである。