編集者のつれづれノート
Editor's Note
(since FEBURUARY13,1999)
Home
(2000/6/19掲載)
タイガー・ウッズ、全米オープンゴルフで記録的ずくめの優勝
今年の男子ゴルフのメジャー第二戦、全米オープン選手権では、本命中の本命であるタイガー・ウッズが、すんなりと優勝して、スーパースターたる所以を遺憾なく発揮しましたね。優勝スコアの12アンダーパーというのは全米オープンでは最小スコア記録ですし、これまでの最小スコア8アンダーパーを4ストロークも下回っており、2位(3オーバーパー)との差が15というのは101年振りの新記録(これまでは11打差)ですから、文字通り、記録ずくめの、ぶっちぎりの優勝でした。
先週の木曜日6月15日から始まった全米オープンでのタイガー・ウッズのプレイぶりををスカパーでスタート時点からフィニッシュまで通して見る機会があったのですが、2位以下の選手が普通の全米オープンを戦っている中にあって、タイガー・ウッズだけは、別のコースで、別のゴルフをやっているようにさえ見えたものでした。スコアは初日から65,69,71,67。4日ともアンダーパーないしはイーブンパーにまとめ、全出場選手中アンダーパーで回ったのは彼のみであることが、タイガー・ウッズがいかに別格の存在であるかを示しています。
飛距離が出る上に正確なティショットに加え、フェアウエイからの距離感が抜群で、大方のホールで楽々パーオンに成功します。短めのパットをまず外すことがないばかりか、かなり、長目のパットも、タイガー・ウッズが打つと、ホールに吸い込まれるようにして入り、バーディを稼ぎ、難しいパーをセービングしてしまいます。3日目の第3ホールで、ものすごいラフに掴まってトリプルボギーをたたくシーンもあり、さすがのタイガー・ウッズも少々腐るかなと思ったものでしたが、いささかの動揺もなく、その後着々とバーディーを重ね、上がってみるとちゃんとイーブンパーで回っているといった次第。技術のみならず、精神力もずば抜けています。
コース設定が四大メジャーの中でも一番厳しいとされ、イーブンパーでも優勝できるだろうと言われほどの全米オープン。今回の会場となったペブルビーチゴルフリンクス(6846ヤード、パー71)での設定も例外ではなく、ラフはきつく、フェアウエイは狭く、その上、霧、強風、と一日ごとに違った天候の下での戦いになり、2日間も、サスペンドになって、試合の一部が翌日に持ち越されるなどの悪条件も重なり、ここでのアンダーパーは至難の業と目されていたのです。事実2位の選手が3オーバーパーであったわけですから、全米オープンにふさわしい厳しい設定であったことに間違いありません。
ところが、今回もタイガー・ウッズには通用しませんでした。彼だけが抜きんでているので、これ以上難しい設定ができないような始末です。ジャック・ニクラウスらがコースの改修をおこない、懸命に難しい設定をしたにもかかわらず、四日続けてアンダーパーないしはイーブンパーでまわり、これまでの全米オープンの記録を塗り替えてしまうのですから、どうしようもありません。最終日一緒に回ったエルスもお手上げの表情でした。彼とて、これまで全米オープンに2勝もした強者ですが、タイガー・ウッズの前では影が薄く、引き立て役の損な役回りを演ずるよりありませんでした。
ちょうど100回目を迎え、記念すべき今年の全米オープンは、これまで3度(1972.1982.1992)も開催され、幾多の名勝負を生んだことのあるこの名門のペブルビーチゴルフリンクスが選ばれたのでした。帝王ニクラウスが愛するコースで、おそらくや彼の最後の全米オープン出場となる今回、この会場が選ばれたのも、彼への配慮もあってのことでしょう。全米オープンに連続44回出場するという、おそらく今後破られることのない偉大な記録を残してニクラウスは予選落ちしてしまい、全米オープンの舞台から去りましたが、彼に替わるようにして、タイガー・ウッズが登場してきたのです。ニクラウスがこのペブルビーチで優勝した1972年、同じくペブルビーチで開催された2月のプロアマ戦でも優勝しているのですが、タイガー・ウッズも、そのプロアマ戦で今年の2月、最終日6打差を逆転しての優勝を引っさげて登場し、ニクラウスと同じようにメジャーをも制覇したのでした。
タイガー・ウッズが、13歳のジュニア時代からこのコースでプレイし、慣れ親しんでいるということも、プラスの要因だったのでしょうが、今回の勝ちっぷりを見ていますと、本当に死角がない強さなので、これからもありとあらゆるゴルフの記録を書き換えていくことでしょう。とにかく、3年半前プロになって以来、出場した80数回の試合では4回に1回の割合で勝ち、最近出場の20試合では2回に1回以上の割合で勝ち、すでに生涯獲得賞金額で史上トップになり、一戦ごとに記録を塗り替えつつ驀進しているのですから、異次元の存在というか、アマを相手に戦うプロの強ささえ感じられます。全米ジュニア、全米アマ、全米オープンを制した史上最初のプレーヤーの栄誉も獲得しました。
彼のプレイぶりを、例えば10メートル以上もある難しいラインのパットを何度もねじ込むプレイや、難しいラフやバンカーからピン側に寄せるアプローチなどを、見ていると、人間の到達しうる能力のすごさというものを改めて感じさせられます。そこには人間の開かれた可能性というものへの信仰を呼び覚ます、スピリッチュアルなものさえあり、それを体現したタイガー・ウッズを憧憬の眼差しで見、彼に知らず知らずのうちに勇気づけられている自分を発見するのです。彼と同時代に生き、プレイを見られることの幸せを今回も感じました。多くのファンも同じ気持ちなのでしょう。18番のグリーンに向かうタイガー・ウッズに多くのギャラリーが、芝の上に、跪いてウエーブのように頭を何度も深く下げていました。きっとそのことを伝えたかったのでしょう。
これで、24歳にして、メジャー3勝、ニクラウスに次ぐ若さでの達成ですが、今年の7月、セントアンドリュースで開催される全英オープンがぐっと楽しみになってきました。いわゆるグランドスラムを達成したプレイヤーはこれまで、ジーン・サラゼン、ベン・ホーガン、ジャック・ニクラウス、ゲーりー・プレーヤーの4人しかいないのですが、タイガー・ウッズは早くも王手をかけたわけですね。彼なら、早晩間違いなく5人目のグランドスラマーになることでしょうし、ニクラウスのメジャー18勝へのチャレンジも今後の大きな楽しみです。
それにしても、日本選手が一人として決勝ラウンドに進めなかったのは、情けないの一言です。これだけ、ゴルフが盛んで、プロの大会には高額の賞金がかかり、毎週テレビ放送される日本から、予選を勝ち抜いた二人だけが出場を認められ、しかも二人とも予選落ちの体たらく。日本という国のゴルフの質が改めて問われなければならないでしょう。
編集者のつれづれノートindexへ