僕の日記1955年
1955年11月24日木曜日 天気:晴れ 起床:7時30分 就床時分 
 

11月24日木曜日晴れ起床7時30分

今の寒さはひどい。手足がかじかむ。特に今日は自分の室には火の気がない。

人間の 体はその時その時の周りの環境によって大きく作用される。今のように寒くては、ぽ かぽかした春の日の中で遊ぶのを想像してうれしいとは思われない。

私がこの阿部家のものであるということは私の現在を現在たらしめ、大きく左右に私 を揺さぶるものである。こんな僻地の島原なんかに住んでいるから、やはり島原っ子 としてか存在しない。まだ行きもしない東京を目の当たりに見るように感じるのは無 理だ。 私はこの島原の大気を吸っている。この島原。風水害もなく、四季は規則正しく訪れ て、まったく海の小波の中を順風を受けて進む帆掛け舟のようである。

その中の水夫なのに、何の心配が要ろう。どんな刺激が彼に降りかかるというのか。 それこそ何もないであろう。船の中には缶詰がいっぱいあって何の心配もない。こと さら近くに泳いでいる肥えた魚もそれがどんなに新鮮でうまくとも、釣ってまで食べ ようとしない。そんな水夫そんな欲望もない水夫。それが島原っ子なのだ。

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