僕の日記1955年
1955年12月3日土曜日 天気:晴れ 起床:時分 就床:時分 
 

12月3日晴れ

読書「心のともし灯」

 私は今鶴見祐輔先生の「心のともし灯」・・・青年に贈る言葉・・・(実業之日本社 版150円)を読み終えた昂奮さめやらぬ思いでこのペンをとっている。

 鶴見祐輔氏といえば、私も小学五、六年の時、「新英雄待望論」、中学一年のとき 「バイロン」、二年のとき「ジスレリー」とその著書に多く接し、一方ならぬ心の糧 を拝受している者であり、先生は第一次鳩山内閣の厚生大臣としてご活躍された。

  私がこの本を図書館で初めて手にしたとき、これまでの氏の著書に対してそうであっ たように、あの堂々たる文体から私に向けて発散される本の力からの昂奮を思い出し て懐かしかった。氏の健筆と雄弁は人の知るところであろう。

 この本は、先生が海の内と外の名のある人々と親しく会見されて、その体験に基づく 人生の教訓を聞き取られた折の記録だそうである。

  この中には、世界歴史を書いたH・G・ウェルズ、日本の大政治家尾崎行雄、世界最大 の稀有の政治家ウイルソン・チャーチル、原敬、ルーズヴェルト、日本を代表する文 豪島崎藤村等等。 私はこの本を読んで実に学ぶべき点が多かった。

 氏は「新英雄待望論」でもそうで あったように、現在の日本、この逆境からすべての勇気は生ずるといわれる。文明の 生ずる最大原因は困苦であるという。そして「今日の青年諸君は明治の時代の私たち よりはるかに幸福なのだといい得る」と言われるのである。

  「『汝自身を知れ』という言葉が古代希臘のデルファイの神殿の正面に刻んであっ た。(中略)この短い言葉は古代希臘人が、自分たちの後に続く幾万年の人類に向 かって投げかけた一つの挑戦であるともいえる。人の一生は結局この言葉に対する答 案であるともいえる。」

 自分自身を知るということ、こんなに身近な私自身を知ることが人の一生、私自身の 一生と、イクォールというのである。 私は日本の若き世代が多く、この本を一読することを希望する。真にもりもりと腹の 底から勇気が湧きあがるようだ。頭上より一線の光明がひらめいた感がある。

 多くの 偉大なる人物が書かれている。なぜ偉大なのであろう。それはすべての偉大なる人が 信念をもって生きていることだ。ただひたすら一筋の道をその生涯をかけて歩みつづ けられているのだ。 鋭敏な判断力、稀なる勇気、記憶力、それに加えて最大の努力をされたことである。 この本に盛られた処世法は、確かに私の行く末にプラスするであろう。

  最後にバーナード・ショウの言葉を掲げる。

「人間を賢くするものは経験でなくて期待だ。未来に対するエキスペクテーション だ。」

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