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前章で見た通り、日本の組織(=企業)は高度に発達した序列社会であり、序列の末端にいる者にとっては住みづらい。本章では前章に引続き、この序列社会の末端労働者に位置付けられている外国人労働者に焦点を当てることによって、序列社会の実像を浮き彫りにしてみよう。
経済の国際化、ソフト化のうねりの中で、外国人の営業マンや技術者が珍しくなくなり、発展途上国を中心に単純労働従業者の入国も増えている。このような労働力の国際化、流動化は我が国経済社会や日本企業、それを取仕切るソフトウエアである日本的経営に大きな影響を与え、様々な変容を迫っている。
我が国おいては、外国人労働者の入国は、「出入国管理および難民認定法(入管法)」りによって、特定の資格に限って認められている。同法は、一九八九年十二月、三八年ぶりに改正され、九〇年六月から施行されているが、改正前においては、在留資格として、その第一は、貿易、事業または投資活動を行う者(外資系企業の経営者、管理者)、第二は、学術研究または教育機関で研究指導・教育を行う者、第三に、演劇、演芸、スポ―ツなどの興行を行う者、第四に、産業上高度なまたは特殊な技術・技能を持つもので公私の機関により招聘されたもの、第五に熟練労働者(例えば中華料理のコックなど)、第六に法務大臣が特に認めた特殊な技術を持つ者とされていた。単純労働者については、一九七六年の閣議口頭了解で受入れしないとされている。また、一九八八年に閣議決定された経済計画、雇用対策基本計画でも、基本的にはその方針を踏襲している。「特殊な技術を持つ者」の場合でも、その職種が日本人で代替できるものは認めないとの内規があり、語学教師など一部以外原則禁止となっている。このため、特殊技術で在留資格を得た人は八六年末で一万人に過ぎず、その四割は語学教師である。
ちなみに、法務省の統計によると、八九年の「就労が認められている在留資格別外国人の新規入国者数・在留者数」は、入国者数合計で七二、〇〇〇人号弱で、このうち最も多いのが「興行」で六万人強、次いで商用の五、三〇〇人弱、語学教師三、五〇〇人、一般就職一、七〇〇人弱、熟練労働四七〇人弱、教授四五〇人となっている。 在留者数は、一九八九年で約四万人であるが、一九八四年の約二倍で、興行関係者がその三分の一強を占めている。一般就職(七六〇〇人)、語学教師(七、三〇〇人弱)も増勢にある。
一方、円高に伴いアジア諸国から観光ビザ等で入国し、資格変更なしで就労するいわゆる不法就労が急増、一九八九年七月末で推定十万人に達している。また、就学名目で入国した不法就労組も加えると二〇〜二五万人に達すると見られている。我が国で最近問題化しているのはこの不法就労者である。不法就労で実際に摘発された者は、一九八八年一四,〇〇〇人,八九年一六,六〇〇人に及び、ここ五年間で急増している。最近の特徴として、八八年に男性が女性を初めて上回っが、八九年には、さらにその傾向が強まっている。男性で摘発されたもののうち、最も多い職種は「土木作業員」で四割強%を占め、以下、工員、雑役となっている。建設業、製造業およびサービス業分野のいわゆる3K(キツイ、キタナイ、キケン)労働を分担している。これらは、フィリピン、バングラディシュ、パキスタン、韓国などからの出稼ぎ的労働者である。最近では韓国からの不法就労者が著増している。女性の場合は、ほとんどがホステスであり、フィリンピン人が五割強を占める。以上の四つの職種で九〇%弱を占める。
法務省が八八年十月に二週間にわたり全国一斉に実施した不法就労外国人の集中摘発により、期間中に退去強制手続きを受けたのはこれまで五回の集中摘発のうちで最高の一五四四人(うち女性四一九人)となっており、人数の増加とともに、国籍の多様化も進んでいる。また、全国の労働基準監督署が八八年十月から十一月にかけて一五、七九六の事業所を調べたところ、四八の事業所で計二〇二人の外国人労働者が就労しており、うち半数以上が観光ビザなどで入国した不法就労だった。この調査は外国人労働者が多く就労している飲食店などは調べていない。労働省労働基準局は「通常の監督でこれだけの不法就労が明らかになったということは、実際には、かなりの規模にのぼることをうかがわせる」としている(1)。首都圏の製造業の場合四社に一社、東京二三区内のサービス業の場合三社に一社がすでに雇用経験を持つとの調査もある(2)。
外国人労働者の大部分はその低賃金目当てに雇用されており(日本人の半分から三分の一)、仕事中に怪我をしても労災が適用されないことが多く(不法就労であっても労働者の保護の立場から労災補償は受けられるが、不法就労の場合申請されないことが多い。八七年四月一日から八八年十二月二一日までに発生した不法就労外国人の労災補償は七七件である)、日本の異常な国内高物価の下では極めて苛酷な生活を強いられている。この様な状態を放置しておくならば我が国の法治国としての資質に疑念すらいだかれかねないところまできている。
外国人の単純労働者の受入れを認めるべきかどうか、議論はかまびかしいが、いっこうにはっきりした対応策が打出せず、不法就労の急増という既成事実が積重ねられている。そのため外国人労働者はウズ社会の最底辺に位置する労働者として、極めて劣悪な条件の下で働かざるをえないにも拘らず、法的な保護措置はとられない。いや、見付かり次第本国へ強制的に送還されてしまう。
いかに経済大国であろうと日本は世界の百数十か国の中の一国家に過ぎず、多くの民族と共存して生きている。日本の繁栄そのものがこれらの国々に依存してなりたっている。しかし、ウズ社会の住人であり、視野を渦の壁で遮断されウズ社会の外へ向けることのない日本人は、ひたすら自国の経済、社会の安定のみをかたくなに守り抜こうとする。日本の輸出、海外投資によって、世界の多くの国々に様々な経済的社会的混乱や摩擦を引起こしたことには思いをおよばさない。カネとモノの自由な国際間取引の利益を最も享受しておきながらこれがヒトにからむとかたくなな態度をとるのみならず、いわば見て見ぬ振りを続けることによって、むしろ外国人労働者から搾取しているのが現状である。
東京商工会議所が行った「外国人労働者の受入れに関する調査」(八八年、会員五、〇〇〇社にアンケ−ト方式で実施)によると、産業界の要請は、質の高い労働力に付いては、必要に応じて、国籍のいかんに拘らず外国人を自由に雇用できる条件整備をして欲しい、という側面と、単純労働者については、低所得国からの労働者の受入れを合法化して欲しいという側面とが共存している。外国人雇用について「雇用したい」とする企業が四〇・四%、「雇用しない」とする企業が五九・六%で、雇用しないとする企業が多い。雇用したいとする企業としては、「海外との取引上、外国人の持つ知識を必要とする」が四〇%で一番多く、次いで「国内労働者では数的に充足できない」が三四・五%、「日本人に代替できない外国人の特殊技能を必要とする」が二九・〇%となっている。外国人を必要とする職種としては「貿易業務」(二四・三%)「技術・商品開発」(二三・四%)が多く、次いで「製造作業員」(一八・三%)「翻訳」(一六・七%)等が続く。
現在の外国人労働者受入れ制限について、今後の方向として「制限を緩和して受入れを増やすべき」とする企業が五九・三%あり、「現状のままでよい」とする企業が三六・七%である。制限を緩和すべきとする企業が考える緩和内容は、職種範囲については、「専門能力・熟練技術を要しない職種も認める」が四〇・六%、「専門能力・熟練技術を要する職種のうち一定部分認める」が三五・一%、「専門能力・熟練技術を要する職種は全て認める」が二四・三%となっている。
また在留期間については、「現状より延長」が五二・七%、「制限しない」が三九・三%、「現状と同じ」が八%である。更に受入れ人数については「なんらかの方法によって制限する」が五五・一%、「制限しない」が四四・九%である。 以上の調査結果を踏まえて、東京商工会議所は一九八八年九月に外国人労働者受入れ問題に関する中間意見を取りまとめ発表した。今回の意見は技術・技能分野に関する外国人労働者の受入れに絞り、単純労働者については「将来にわたるわが国経済社会に与える影響、特に労働力需給バランスの的確な見通し、受入れ後の国内体制の整備など長期的かつ幅広い視点から継続して検討を行うこととする」ことになっている。意見書では、外国人労働者の国内就労機会の拡大について、
(1)高度の専門的知識、技術、技能を有する外国人労働者については、既存の在留資格範囲を大幅に拡大すること、
(2)上記(1)に準ずるレベルの労働者についても弾力的に就労を認めること、
(3)在日、来日外国人へのサ―ビスを目的とする就労についても、上記の範囲にかかわらず個別審査により認めることとしている。
また、外国人労働者の入国および雇用管理体制の確立について、
(1)外国人労働者の受入れに当たっては、原則として二国間協定の締結を前提とすること、
(2)出入国管理及び難民認定法等の改正に当たっては、就労範囲と期間の明示等制度の明瞭化と申請・変更許可に関する手続きの迅速化を図ること、
(3)雇用主が外国人労働者に対し、労働条件面等における公平かつ適正な運用を図るよう、労働関係法規の厳格な適用を図るとともに、雇用主の責任を明確にすること、
(4)不法就労に対する実効ある対策を講ずるため、関係法規の厳正な適用と整備改善を図ること、を提言している。
一方、外国人の単純労働者の受入れを条件付きで認める人が過半数に昇ることが、総理府の調査(3)で分かっている。調査では「単純労働者であっても一定の条件や制限をつけて就職を認める」と答えた人が五一・九%に達し、年齢別に見ると若い人ほどその割合が大きい。「単純労働者の就職を認めない現在の方針を続けるべきだ」とした人は二四・二%にとどまった。観光ビザで入国した外国人がホステスや土木作業員として不法に就労していることに関しては「良くないことだがやむを得ない」との意見が四五・四%で、「良くない」は三九・四%だった。
調査結果が、最も新しい朝日新聞の調査によると、外国人の単純労働者の受入れに関する今後の方針としては、「条件をつけて受け入れる」五六%、「受け入れない政策を続ける」三三%、「その他・答えない」一一%となっている(4)。
以上の調査などでも分るように、外国人労働者については国民の意識もかなり受入れを許容する方向へ動いてきている。しかしながら、まだ充分な受入れ体制が整備されているとはいえない。
政府は増加する外国人労働者に対して、制定以来三八年ぶりに入管法の改正を行い、それで当面対応しようとしている(改正法は一九九〇年六月一日から施行)。外国人在留資格を従来の十八種類から二十八種類に細分化し、新たに「医療」や「法律・会計事務」など十の在留資格を新設するなど専門的技術を持つ外国人の受入れを拡大する一方、単純労働者については、受け入れないとの従来の方針をつらぬき、不法就労者の雇用主・ブローカーに対する罰則規定「不法就労助長罪」を設け、単純労働者の雇用を防止する考えだ。単純労働者の受入れを認めないのは、「国内の失業を増やす恐れがあるし国内の労働条件等に悪影響を及ぼす恐れがある」(労働省)「日本の経済、文化、治安その他社会の各分野に及ぼす(悪)影響が大きい」(法務省)と考えているためである。
外国人労働者の受入れは日本人の雇用の場を狭めるだけでなく、西独などの例が示すように治安の悪化といった厄介な問題を引起こす。他民族とのつきあいの経験の乏しい我が国の場合、受入れに対する抵抗は特に根強い。このマイナス面を強調して安易な自由化を戒める声は依然として強い。しかし、経済の自然な流れからいえば、高所得国や地域へ人々が集まることは避けられない。今や、一人当たりGNPが世界一の水準にある日本に、海外から発展途上国のみならず、先進工業諸国をも含め、人々が職を求めて流れ込んでくるのもむしろ当然だろう。経済力がこれだけ強くなり、モノやカネの自由化の恩恵を存分に享受しながら、ヒトの自由化はお断わりというのは虫がよすぎる。必要な制限を設けながら、労働力の自由化に徐々に踏切らざるを得ない時期に来ている。最近の不法就労の急増は、その前触れである。
一九八八年七月、中国の李鵬首相が、訪中した当時の竹下元首相に、建設労働者の受入れを要請したように日本への流入圧力が強まっていることに加え、国内の吸引力も強い。この圧力をこれまでのように入管法のみによって水際で支えることはほとんど不可能に近い。前述のように首都圏の製造業の四社に一社、東京二三区内のサービス業の三社に一社がすでに雇用経験を持つ中で、今回の入管法の改正による雇用者への罰則制度を強行すれば、多数の犯罪者を作り出し、弱い立場にある外国人不法就労者の人権救済をますます困難にするなど、無用な社会的混乱を引き起こす恐れがある。また、過度に厳格な出入国管理は、大局的にみて、反日感情の増大を助長するなど、日本にとってデメリットをもたらそう。
中小企業では景気拡大に伴って従業員がなかなか確保しにくくなっているため、外国人労働者の自由化を求める声が強い。建設業の大手では外国人単純労働者の雇用に消極的だが、孫請け以下の中小・零細業者の中には、若者の「建設離れ」がすすむなかで、日本人に比べ低賃金で雇える外国人を使うケ―スが増えている。外国人労働者問題は日本の中小企業問題であり、円高で生産コストの切り詰めを親会社から迫られる下請企業での雇用も多く、日本の産業を今や最底辺で支えるのは外国人労働者といっても決して過言ではない。
ウズ社会は前回も述べたように序列社会であり、周辺労働力(パ―トタイマ―、非正社員、臨時工など)に依存して成立しており、不断にそれを再生産し続ける(外国人労働者もその一例)。経済大国日本を支えているのはウズ社会の周辺に位置し、ウズ社会の中心部とは無縁の労働力である。ウズ社会の中枢部は台風の中心部のように回りの激しい気流に守られ、いわば無風状況に近くぬくぬくとして回りからの生産物を吸い上げる構造になっている。これまで大企業は、こうしたウズ社会の中心部と周辺部の二重構造を容認しそれに乗ることによって自らの利益を享受して来た。それゆえ、周辺労働力に対する配慮が今もって充分ではない。つまり自社内でも正社員と非正社員との差別を温存し、対外的には下請と親企業との間に歴然たる差別を存続させている。
この構造が外国人労働者にも当はめられる。大企業は見て見ぬ振りをすることによってこの構造に加担している。大企業側は自らが下請、孫請け企業を必要としている現実(末端では劣悪な労働条件のパ―トに依存している)を無視し続けているように、外国人労働者を必要としている国内の現実(ダ―ティワ―クには日本人労働者は集まらなくなっている)を無視し、国際的要請(日本で働きたいという多くの人々の存在)に耳を貸そうとしていない。
二一世紀経済基盤開発国民会議(議長:隅谷三喜男東大名誉教授)は、単純労働者を含む外国人労働者を積極的に日本の労働市場に受入れるように求めた提言を発表した(5)。労働時間の短縮を実現しながら一定の経済成長を達成するためには、生産性の向上を考慮しても、西暦二〇〇〇年までに二一七万人の労働者が不足するとの試算に基づいたもので、一時的な「出稼ぎ」労働者だけでなく、日本へ定住を希望する単純労働外国人労働者の受入れを促進することが、将来の労働力不足の補完につながるとともに、経済大国としての「重大な責務」と強調している(6)。誠に時宜を得た提言といえよう。
外国人労働者雇用と日本的経営との関わりには、二つの側面がある。ひとつは単純労働力の受入れの問題である。外国人労働者の不法就労を容認しているのもほかならぬ日本的経営とこの日本的経営を成立させている就業構造そのものであるからだ。もうひとつは就労資格を持った外国人労働者の日本組織内での処遇の問題である。異質性の強い外国人労働者を「同質化と異質性排除」を基本思想とする日本的経営がどう取扱うかという意味においてである。
広島大の山下教授らの研究によると東南アジアに進出した日系企業において、日本的経営観が崩れつつあるという。報告書はタイ、インドネシア、シンガポ―ル、マレ―シアに進出した日系製造会社を対象に行ったものである(回答一三二社)。日本的経営の最大の柱ともいうべき終身雇用制と年功序列制が、どの程度、現地に適応するかの調査によると適応可能としたのは終身雇用制で二二・七%、年功序列制で二〇・二%を占めたものの「適応できない」は各四八・七%、三七%もあり、壁にぶち当たっていることを示している。この調査結果は、今後東南アジアからの外国人労働者が増加すれば、日本的経営そのものの変容を迫る要因となることを示唆している。多くの外国人労働者には、日本の年功序列制や終身雇用制は恐らく理解困難であろうし、馴染まないであろう。したがって職種別処遇制度の導入や、能率給の採用、契約社員制度の導入など人事管理システムの改革が必要となろう。
日本においては、もともと人権意識が薄いところに激しい経済競争を強いられたため人権より経済性を重視する気風が日本企業(日本的経営)には染付いている。豊かさの実感を人々がもてないでいるのも人権が擁護されているという意識をもてないことと無縁ではない。経済的に豊かな人も自らの人権を自ら度外視することによって経済的豊かさを確保している側面がある。つまり、与えられた休暇もとらず、頑張った結果か、回りの人からも自らの人権を尊重して貰えず、与えられた有給休暇も取れず、残業や、休日出勤や、接待などを強いられた結果であり、人間として尊重されていないという認識あるいは無意識の知覚が「満たされざる感覚」を与え、これが「豊かさ」という精神性を伴う感覚を持てないことの原因になっている。
こうした経済優先で人権に対する構造的な配慮の欠如、周辺の労働力に対する人権の無視、軽視が外国人労働者に対する対応にも現れており、不法就労がかなり大きな現実となっているにも関わらず、的確な対応をせず、いわば放置しているのは、基本的にはそうした背景があるからである。外国人労働者を日本人並に扱うとむしろ日本人労働者の方から反発が生まれかねないのである。
日本人が、首相や政治家を含め、差別に鈍感なのも日本文化、日本的経営そのものが差別に鈍感で、人権無視、軽視であるため。自ら意識しないで差別的なことを言い、そのように振舞うのである。アイヌの研究者のように自らアイヌに深い関心と愛着を持つものですらアイヌに対して、無意識のうちに差別的な言動をとるほど、差別意識は、日本文化の中に牢固として染付いている。
外国人労働者に対しては労働力であるとともに「ヒト」であるとの視点を忘れてはならない。人権軽視の日本的経営の下で、日本人労働者以上により周辺へ追いやり、チ―プな労働力として、外国人労働者を導入するのは問題あり。現在のような不法就労を放置している状況はそうした状況をむしろ容認することと同罪であり、極めて問題が多い。
外国人労働者に対し、賃金、労働時間、労災補償、訓練、健保、医療、住宅、子弟教育を含めて、日本人と同じ労働条件と生活条件を確保することが必要だ。現在のように国内の差別構造の延長線上に外国人労働者の不法就労を放置し、劣悪な労働条件の下で働かせることは、国際問題化しないとも限らない。今日では経済大国の国内問題はすぐれて国際問題なのである。その自覚が必要になっている。
外国人労働者の受入れ問題は、受入れる側にたつ日本人自身の国際性が問われる問題でもある。これまで日本はアイヌや沖縄列島の人々に対しても常に「日本風」に改めさせようとし、無用の摩擦を引起こしてきた(朝鮮半島を統治した時にもその過ちを犯した)。アイヌも沖縄列島の人々も遺伝子の上で純粋の日本人であることが証明されているにも関わらず、僅かに異なる民族文化に対してさえ「同質化と異質性の排除」を強制して来た。今後外国人労働者の受容という避けて通れない現実に直面し、同じ過ちを繰返してはならない。つまり、外国人労働者を日本的経営の枠組みの中に強制的に取組む愚を犯してはならない。
ヒトの国際化によって「同化か排除か」「同質性の濃淡による序列化・差別化」を基本とする日本的経営の在り方そのものの正当性妥当性をいままさに問われているのであり、この問題は、日本の国際性の試金石なのである。外国人労働者の受入れは、構造的序列社会の改編という困難な問題を取りこみ、ウズ社会そのものの変質を迫ることにつながる。それゆえ日本側の対応は遅く、後手後手に回っているのだ。日本が国際社会で今後とも生きていくにはこの体質を改善し、他国や世界の利益になる行為を思切ってやらなければならない。それが多くの痛みを伴うものではあるが、国際社会の一員でありかつまた経済大国である日本の当然支払うべきコストなのだ。そうしたコストを支払うことなしに、日本の長期的な安定成長は不可能であろう。
今後の日本的経営に要請されるのは異質性の共存できる組織の構築であり、序列による差別のない、多様な生き方、考え方を容認しうる経営原理の導入である。
注
(1)一九八八年十二月三十日『日本経済新聞』
(2)首都圏については、「首都圏工業を取り巻く技術革新・環境変化に関する実態調査」(一九八九年二〜四月実施、東京二三区および川口市、川崎市に本社を置く中小製造業からの標本抽出、郵送法、回答数二六六社、回収率九・一%)。 東京二三区については、東京都品川区労政事務所『外国人の雇用に関する意識・実態調査』一九八九年(一九八八年一〇月従業員規模一〇人以上の事業所を対象に実施)
(3)総理府「外国人の入国と在留に関する世論調査」全国の成年男女一万人を対象に一九八八年二月に面接方式で実施、回答率七六・五%
(4)一九八九年一〇月、有権者三、〇〇〇人を対象に、調査員による面接法で行われ、回収率は七九%(『朝日新聞』一九八九年一一月六日)
(5)一九八八年十二月十三日
(6)『読売新聞』一九八八年一二月一四日