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「赤ん坊のこと(十二)」
◆初孫のHは、この三月中旬に、満二歳二月になった。
順調に成長している。 前に喘息持ちではないかと危ぶんだほど咳が激しかったが、その後、夜に一度激しく咳き込んだ 時には、幸い購入していた吸引器を使ったららすぐ直った らしい。今のところ大きな健康上の問題はない。
◆まだ、2歳2ヶ月で、すでに、ラスベガスにも、宮城県にも、下田にも行った。
◆食欲は相変わらず、旺盛で、せんだっても(3/10)曾お祖父ちゃんの誕生パー ティで、肉団子や、リンゴサラダなどの料理をたっぷり食べた後に出てきた、息 子の嫁の手焼きのチーズケーキを、一切れ切り分けて貰い、パパの膝で、もくも くと食べた。その後イチゴが出てくると、早速手を出すので、ケーキをきれいに 食べたら上げるというと、パパに手伝って貰い、それこそ、ケーキの破片ものこ さないほど、きれいにたいらげ、その間もイチゴから目を離さない。ケーキが終 わるとさっそくイチゴに手を伸ばし、ぺろりを食べてしまった。食べ終わると、 さっさとよだれかけをとって貰い、抱いていたパパの膝を降りると、曾お祖父ち ゃんと、息子の嫁のところに飛んでいった。欲しそうな顔をしてイチゴを眺め、 ちゃっかりもう一個せしめ、にこにこ顔で食べた。誰が一番甘く、攻略しやすい か知っているのだ。
◆食べ方も、フォークやスプーンの使い方が巧みで、実に上手に食べる。ものの 形状や分量フォークの傾斜に合わせて首の角度を微妙に変えてこぼさないように 口に入れる。落ちそうになると首を曲げ、さっと皿の上に持っていく。煮物の残 ったおつゆ(これがまた大好きなのだ)なども、椀を両手で支えてきれいに飲み 干す。食べることにかけては、なかなかのものである。(3/21)パパの田舎に帰 ったときも親戚の人を驚かせたらしい。
◆しかも、いまのところ好き嫌いがなく、何でも食べる。「シマジロウ」(福武 書店の幼児向け月刊ビデオ雑誌)で、ピーマンとかニンジンを食べようの歌があるせ いか、ピーマンもニンジンも大好き。せんだっては、ショウガで煮た辛い煮物も 平気で食べた。まだ、舌(味覚)が十分発達していないせいでもあるらしいが。
◆文字に対する関心が強いのには驚かされる。
(2/1)前回、P、O、L(実はAPOLLOから覚えたのだ)などのアルファベットを覚えたことを書いたが、家内がHと 一緒に町を歩いていて、いきなりHが「ピー」と叫ぶので、なにごとならんとH が見つめる先を見るとパーキング場のPのネオンが輝いていたというのだ。
(3/20)パパの田舎に帰ったHが、田舎のお祖母ちゃんのエプロンの背中の部分がちょうどHの字のような形になっているのに気づいて、指さしながら「エイチ」と叫んで、周りの人を驚かせたという。 自分で丸い字を書いて「o」とも言う。
(2/5)新聞紙を文字の部分を指してこれはないかと知りたがるので、これは全 部「ジ」だよと教えてやると、字の印刷されていない折り白の所を指さして「ジ、 ナイネ」
(3/5)数字にも興味を持っていて、1とか2とか3が読める。しかも、書いて貰 うのが大好きで、書いて欲しいときは「3、書ける?」と尋ねるようにいう。3を 書いてやるとすぐ、「ごー書ける?」と次から次に「書ける?」を連発して離さ ない。 食事が終わるのを待ちかねていて、「じーじ、あっち行こ」と文字を書く紙の 広げられたテーブルの方へ引っ張って行こうとする。小さいと大きいの区別もで きて、「小さいさん、書ける?」「大きい5、書ける?」と来る。
◆驚いたことには、6と9がさかさまの関係にあることもよくわかっていて、いつ ぞや、うどんを食べていたら「ばーば、6」と6のようになったうどんを示し、自 分で皿を180度回して、「ばーば、9」とやったのだそうだ。どうしてこういう関 係を見抜くのだろうか。不思議でならない。
◆「Z、書ける?」というので、zを書くと「2みたい」
◆(2/5)この「みたい」も使い出して、赤いものさえ見ると決まって「にんじ ん、みたい」。
◆(2/14)しかし、あまりニンジンの赤と似ていないと「ちょっと、ちがうね」 と付け加える。
◆(3/2)「あのね」と言う言葉を覚え、大きな声で「あのね」と呼びかけ、返 事すると、顔を崩して喜ぶ。
◆(3/5)何かやろうとして、しくじると自分で「おかしいね」
◆自分の見聞したことを、「ばーば、ばーば」と呼びかけ、相手に話そうとす る。聞く方が自分の話すことを理解しているかどうかよくわかっていて、理解し ていないとわかると、にこっともせずに、何度もくり返して話そうとする。
◆人間の子どもは、受精から誕生まで、生物の進化の跡をたどっていると言われ る。魚や爬虫類や原始哺乳類の時代を経て霊長類に達するというのだ。それと同 じことが言語能力の習得の過程でもくり返されているのではないか、という気が する。というのも、子どもは、覚えた一つの言葉を極めて多様なシチュエーショ ンにも、うまく当てはめて使うからだ。例えばドアを「開けて」という言葉をH はまず覚えた。と、その開けてということばをみかんを「開けて」というふうに 応用するのだ。なるほど開けるということがで代替できないことはない。コンセ プトはつながっている。 基本的な語彙には、多義的な単語が多い。基本的であればあるほど、その傾向 が強い。たとえば、「とる」「うつ」「あう」などの基本語を見ると、じつに多 くの漢字が当てはまる。とる(取る、撮る、採る、摂る、捕る、執る、盗る、穫 る、獲る、録る、探る)うつ(打つ、撃つ、討つ、伐つ、撲つ、拍つ)あう(会 う、合う、逢う、遭う、遇う)など。 幼児が、基本的な言葉を覚えるということは、基本的なコンセプトを掴むとい うことではないだろうか。それで、そのコンセプトを使えるようなシチュエーシ ョンに多用するのだ。初めて言語を取り入れた原始人類もおそらくそうしたのだ ろう。だから、最初、発明された単語は、様々な似通った場面で多用され、多義 的な単語になったに違いない。 したがって「ぐるぐる」という言葉をおぼえるということ自体が、何かが、丸 く回るというコンセプトを掴むことに他ならず、ダンスでぐるぐる回るのも、タ イヤがぐるぐる回るのも、オルゴールの軸がぐるぐる回るのも、同じこととして つかむのではないだろうか。
◆また、文字の発明は、シンボルの発見から導き出されたものに違いない。原始 人類も、一や→や○や△などのシンボルに強い関心を持ち、これらシンボルで、 何かを表す約束をし、それに、線とか矢印とか丸とか三角と名付けたのだろう。 そうしたシンボル(記号)を使う習慣が先にあって、それが、次第に文字の発明 へとの進化したに違いない。文字を発明しない民族は多いが、何らかの意味で、 シンボルを使わない民族はいない。したがって、幼児も、まずシンボルとしての 文字に興味を持ち、それがピー(P)とか、サン(3)とか、呼ばれることに関心 を持つのだろう。この段階では、そのシンボルの意味するもの自体は、わかって いない(3をサンと読めても、これが1+1+1を意味しているということがわかって いるわけでなはい)。
◆「パパこれ買ったの」というように主語目的語述語の文章が作れる。しか し、テニヲハはまだ、ほとんど使えない。「の」は使うときがある。原始人類 も、まず単語を並べるところから言語能力を発達させたに違いない。その後、文 章を明確化するために、テニヲハや格変化を開発したのだろう。これも、人類の 言語取得のプロセスをなぞっているに違いない。
◆(3/13)娘が、仏頂面をしていたら、
Hが「ママ、もうプンプンやめてよ」といったという。
「そんなことすると、ママ、もうプンプン」と悪いことをするのを止めさせる 意図で、娘がふくれっ面をしながら、プンプンという言葉を使っていたのを、応 用したらしいのだ。
◆おしめを替えてやりながら、パパが「くちゃいね」といったら、Hが間髪をお かず、大きな声で「くっちゃいね-」(爆笑)。
◆(3/14)Hを連れて遊びに来ていた娘が帰るというので、妻が玄関先まで送りに 行った。ところがすぐには帰ってこない。我が家から、30メートルほど離れた大 通りへの曲がり角辺りから、幼児の大きな泣き声が聞こえてくる。どうも、Hの 泣き声のようだ。妻は、なかなか帰ってこない。15分もたったろうか。やっと帰 ってきた。妻がいうには、玄関先で送ってすぐ戻るつもりだったのに、Hが泣い て反対したのだそうだ。激しく泣くので、曲がり角にある米屋の主も顔を出した という。娘の家の近くまで送ったら、やっとHは機嫌を直して「バイバイ」と手 を振ったのだそうだ。
◆車や飛行機などメカニックなものに対する関心が非常に高い。ミニカーの玩具 を持っているので、「プリメーラ」も知っている。わたしが中国西安旅行からこの3月はじめ、買って帰った複葉機も愉しんでいる。
◆わたしの還暦祝い旅行で、下田に行き、船にも乗ったので、テレビで船が映る と「船」「海、水イッパイ」「カモメ、いた」という。
◆(3/21)パパの田舎に帰って以来、「緑の新幹線乗った」と言う。
◆Hは、自分のことを、回らぬ舌でHという。「これHの」という具合に。どう して、自分のことが、Hとわかるのだろうか。犬や猫も、名前を呼ぶと、自分が 呼ばれていることがわかる。それと同様に、生物は、自分というものが、どこか にあり、それが、呼びかけられているといういうことがわかり、自分でも自分を 自分の名前で認識しているらしいのだ。
◆写真を見るのが好きで、自分自身を含め、一人ひとりが識別できる。 デジタルカメラで撮ってやり、液晶のモニターや、パソコンに取り込んで見せると、覗き込むようにして 見る。また、見せろと何回もせがむ。
我々の寝室に来るのも好きで、わたしが会社から帰って着替えていると決まってやってきて、妻のベッドの傍らにある、オルゴールのねじを巻いて、「ララのテーマ」を、嬉しそうな顔をして、何度も何とも聞くのだ。ベッドにも、このごろ楽々登れるようになったので、ベッドの感触を愉しんでいる。
いつぞや、妻と一緒に寝室に来たHは枕元の水の入ったボトルから、おいしそうに水を飲み、三面鏡に映った自分と妻を見ながら「写真?」と、聞いたのだそうだ。「違う、これは鏡に映っているのよ」と妻が言うと納得した顔をしていたという。
◆何ごとにも慎重な態度は相変わらず。何ごとも、安全かどうかを確かめた上で やる。それでも時折、椅子から転げ落ちたり、机の角に頭をぶつけて、さんざん 泣いたり、泣きべそをかきながらも必死に耐えたりする。
◆顔の表情が、ますます、子どもらしくなってきた。父親によく似ている。笑う と細い目が見えなくなる。
◆自己主張も強くなってきた。しかし、母親の体調が悪く、構ってもらえないよ うなときには、その状況を受け入れて、じっと耐えている。ときには、涙をこぼしなが らも。
◆根が明るく、情緒面は安定しているので、つき合いやすい子である。
◆このまま、すくすくと育って欲しいと念じている。