目次(ぜんそくについて 食事について 言葉について 身体能力などについて)
「赤ん坊のこと(十三)」
◆初孫のHは、この五月中旬に、満二歳四月になった。体重も増え、 順調に成 長している。 もう、赤ん坊のことと題して連載を続けるのがためらわれるような幼児らしい顔つきになってきた。
◆前に喘息持ちではないかと危ぶんだ咳だが、やはりその通りだということがわ かった。毎晩のように咳き込み、購入した吸入器をそれこそ、頻繁に使うように なった。H自らが気持ちが悪くなると「吸入して」と言い出すほどになった。た だ、使いすぎると良くないということもあり、とうとう自宅療養は限界に達し、 近くの病院に4月下旬入院することになった。点滴をして、体質を変える必要が あるというのだ。
病院に見舞うと元気にしているが、左手には包帯でぐるぐる巻きにし、点滴の 管がつながっている。見るからに痛々しい。しかし左手は不自由であるが、Hは よく聞き分けて、ベッドの上で右手だけで玩具の自動車などと遊んでいる。毎 晩、誰かが泊まり込むというわけにもいかなくなり数晩は、一人で病院に残され ることになった。看護婦の話だと大声で泣きながらも何とか耐えて数泊し、約一週間の入院で無事 退院した。その後、発作は出なくなった。このままずっと順調にいってくれるこ とを願うばかりだ。
このごろ(5/21)、手で口を押さえて「吸引してるの」「気持ちいいの」とい う仕草をする。咳き込んだ日のことを覚えているのだ。
◆食欲は相変わらず旺盛で、「おいしい」と言いながら、ニコニコと食べ、出された物 は、いつも残さず平らげる。
せんだっても(5/19)カレイの煮付け、キャベツのいためもの、キュウリとシラ スの和え物など、大人並に食べ終わり、「もう一杯」とご飯を要求する。ご飯を 上げると、「納豆あるかな?」。紙コップに入っている納豆をビニールやセロハ ンを取りのけ、味付けの出汁や芥子の小袋を器用に取り出す。ママに「まぜて」 「かけて」と頼んで、結局、納豆ご飯をぺろりと食べた。その後デザートに出たグレープフルーツを、一人最後まで黙々と食べ4切れ食べた。「種は食べないの?」「こ っちから食べるの」とおつゆをこぼさないように下から食べたりしながら。
◆ 食事が終わると、お腹がはち切れそうなほど膨らんでいる。ばーばとお腹の大 きさを比べあった。 「大きなお腹」というと、「ちっちゃなお腹」と応じるし、お腹をすぼめて見せ て「ちっちゃなお腹」ともいう。
◆食べ物に対する嗅覚がするどく、食べる気配を感じて隣の居間で遊んでいてもすぐ覗きに来るし、 どんなものにも興味を示し手を出す。この前は、ピスタチオ(5/17)も、とろろ 芋(5月)も味わった。どちらもおいしいと食べ、特にピスタチオは気に入った ようで、母親にこれが最後と言われて諦めた。ただ、キムチや刺身など、大人の食べ物と強くいうと納得して欲しがら ない。
◆反抗期で、何か言われると「いや」とまず拒絶する。ところが「ご飯だよ」と いうと「はーい」と軽やかな返事をしてどこにいても飛んできて、テーブルの決 められた椅子に登り、電話帳の上にちょこんと座って待つ。
◆フォークやスプーンの使い方が巧みで、実に早く上手に食べるのは相変わらず で、娘が魚をほぐしてやるのが待ちかねたようにしてぱくぱく食べる。大人並に たっぷり食べ、しかも、煮物などの残ったおつゆ(これがまた大好きなのだ)な ども、椀を両手で支えてきれいに飲み干すので、食べ終わった皿やお椀はいつも どれもきれいなものである。
◆文字に対する関心が強いのには驚かされると前回も書いたが、アルファベット の26の大文字、数字の0から9まで、完全に覚えてしまった。 わたしが、台湾旅行へ行ったお土産に、アルファベットと数字をくり抜いたもの をはめ込むボードを買って帰ったところ、大変な気に入りようで、AからZ、0 から9まで、順序不同で外したりはめたりしながら、逆さまだろうが裏返しだろ うが、これは「エイ」これは「サン」と言えるようになった。 「エックスはバツとおなじだね」というような会話も出来る。 カレンダーを見て、「ゴガツ」「ロクガツ」とも言える。10,11,12も読める。セ ロテープの容器を見て「これ6みたい」とも、言った。
◆数字やアルファベットを書いて貰うのが相変わらず好きで、夕食が終わるのを 待ち構えていて「じーじー、ピー(P)書ける」と隣の部屋の文字を書く紙の広げられ たテーブルの方へ引っ張って行こうとする。付き合い出すと、離さない。トラッ クの絵なども描かされる。
◆「まちがえた」という言葉はいっぺんで覚えたらしい。妻がたまたま「まちが えた」と言う言葉を使ったところ、2を指してわざと1といい、「まちがえちゃっ た」とにやりとするのだ。先日も、電車のおもちゃを指して「何線」と聞かれて妻が「総武線」というと 「うん?」「うん?」といって納得しない。「そうね、中央線だったわね」と間 違いに気づいて言い直すと、「ばーば、まちがえちゃったね」
◆一つの言葉を覚えると何度も聞いたり、使ったりして覚える。NHKテレビの自然シリーズ番組 でタコをやるというのでわたしが「たこさん、テレビでやるよ」というと、「たこさん、 やるの」とHがいう。傍らから、妻が「たこでいいんじゃないの」というので、途中から 「たこ」と言い直すと、Hは、「たこさん?」とくり返して首を傾げる。「たこ でいいんだよ」とくり返して、その挙げ句「たこさんおしまい?」「そうおしま い」と答えると、やっと「たこ、出てくる?」と「たこ」を安心して使うように なった。
◆自分の見聞したことを、「ばーば、ばーば」と呼びかけ、相手に話そうとする のも相変わらず、しかも、使える言葉の数も増え、テニヲハの入った文章をかなり言えるよ うになったので、コミュニケーション能力は日に日に進歩している。われわれが、わかっていないと見ると、にこっともせずに、何度もくり返し、わからせようとする。
◆わたしが家に帰るとHは、わたしに「じーじ、今日、東西線に乗ったの?」「青い電車に 乗ったの?」「じじは今日会社に行ったの?」と必ず話しかけてくる。
◆「じじとばばとHとけいことしげちゃんといっしょにご飯食べるの」。「みんなで食べる」「ママとババとじーじとじーちゃんと」。ゆうくん、ともちゃんなど、人の名前はおどろくほど覚えている。
◆ テレビのタコの 番組(5/21)で、海や船が出てきたら、3月に下田へ行ったときのことを思い出した らしく、「船、きのう乗ったね」。このきのうは過去にという意味だろう。「と もちゃん(息子の嫁の名)、海行ったね」「大きい電車乗ったね」「ご飯食べた ね」「お食事食べたね」 「緑のお魚、いるんだね」「お魚が、ぱくって食べちゃった」「ぱっくん」「も ぐもぐ」「夜、海に行くんだ」「お魚とたことちょっと違うね」
◆食べながらも、さかんに、「これ、きゅうり?」「これ、おさかな?」「これ ご飯といっしょに食べるの?」「これ、お食事?」「これ、ごちそう?」と、言葉を確認している。
◆「何食べたの」と聞くと「トマトとお魚と、キャベツとご飯と納豆と」と、とをつけて食べたものを並べる。
◆「パパもまだ食べてない?」「もう食べた?」と過去形も少し使う。
◆病院にいるときから、玩具のダンプカー、ショベルカー、ミキサー車、クレー ン車でよく遊んだ。名前をたちまち覚えてしまうし、「ショベルカー何する の?」「クレーン車は?」と聞く。
◆テレビのニュースでダンプカーが高速道路の壁を突き破って落ちたのをやって いるのを見て、「大きな救急車、ピーピーピー」確かに救急車が走っているのが写っていた。「これニュース?」
◆「Hも一緒に行く」「ちょっと手をつないで」「H、これできた」
◆コンセプトを掴むのがうまい。1と0を並べてじゅうと教えてやると、2から3, 4と9まで数字を持ってきてなんというかを聞きたがる。
◆電灯のスイッチのところに踏み台を持って行き、背伸びしてつけることを覚え て、居間の灯りを全部つける。妻が「明るすぎるから、少し消しなさい」という と、小さな灯りの方を消した。翌日、見ていると、ちゃんと明るすぎないだけの 灯りだけをつけていた(5/22)。明るすぎるという意味が分かっているのだろ う。
◆このように、言葉のニュアンスを驚くほど理解している。言葉とはもともと、 ニュアンスがあって初めてコミュニケーションの手段足り得るのであって、それが言葉 の本質といえる。しゃべられるようになるということ自体がニュアンスをつかめ るということにほかならないのだ。
◆われわれののいうことはかなりよくわかっていて、即座に関連あることを言える。 「もう帰るのよ」H「まだ帰らないの」「おもちゃ片づけてね」H「片づけないの」「もう、車から降りてね」H「まだ降りないの」
◆わたしがチューリップの絵を見てチューリップの歌を歌って聞かせたら、歌えるようになった。妻が一緒に通りを歩きながら、歌を口ずさんでいたら、Hもチューリップの 歌を歌っていたという。
◆顔つきが赤ん坊時代の顔と明らかに違ってきた。父親似の愛嬌のある顔をしており、両目を 片方に寄せて、おふざけをする。
◆ 滑り台に自分で登って滑り降りる。
◆台湾から腹話術に使えるアライグマのぬいぐるみを買ってかえり、わたしが左手で操りながら、Hに「Hくん、今晩はぼくはアライグマのくまちゃんです」と呼びかける。ちょっと不思議そうな顔をし、私の顔とアライグマの顔を見比べるようにするが、気に入ったようで、明らかに自分より 幼いものに対するような態度やことが使いで接する。「これなんですか」と 聞くと「4っちゅです」「ななつでちゅ」と幼児語をわざわざ使って答える。立ち上がって、胸に抱きしめてやり、頬を こすりつける。
◆車が大好きで、車の玩具を沢山持っているが、いちいち名前をいえる。ショベ ルカー、クレーン車という具合に。わたしのパジェロは、じじぶぶで、私の家に 来ると必ず「乗せろ」といって聞かない。乗るとハンドルをとり、しかもそのハ ンドルさばきが堂に入っている。しかも、ボタンを全部押すので、ワイパーの位 置がずれていたりする。ドアを開けると室内ランプが灯ることも知っている。一 度乗ったが最後なかなか降りようとはしない。
◆車のテープレコーダーにHがカセットテープを入れようとしているのを妻が見て、「Hくん、反対だよ」というと、Hはカセットを取り出してつくづく見て、「Bの方?」と言って入れ直したという。確かにカセットの両面には、それぞれAとBと書いてあるが、こんな幼児がそれを確かめて入れたというのだ。
◆大人数の写真の中から、わたしの顔を簡単に見分けた。識別能力は高い。
◆寝室のお面が気になるらしく、わたしが帰宅すると必ずお面を見に寝室に行き たがる。中国の魔よけの龍年のひとのお面だけに、確かに普通の顔ではない。そ れが怖いのだろう。「こわいの?」た聞く。「可愛いよ」と行ってお面の頭をな ぜてやると、「可愛いの?」
◆寝室には、複葉機などのクラシックな飛行機のカレンダーがあるが、椅子の上に 乗ってそれも必ず見る。五月、六月といいながら、12月までめくる。「ぶーんっ て、宮城ばーばのところへ行くの」宮城におばあちゃんがいるのである。親子連 れで、新幹線で行くのだが、飛行機は遠いところへ行くものであると考えている のだ。パイロットもわかる。
◆トイレにもついてきて、さっと蓋を上げてくれ、わたしのおしっこの様子を見 ている。まだおしめはとれていないのでOJTである。終わると栓を押して、水 を流してくれる。歯を磨くのも大好きで、洗面台の前に椅子をおいて、専用の歯 ブラシでみがき、水を口に含んでぺっと吐き出し、うまくうがいができる。
◆先日(5/20)、NHKテレビの囲碁選手権を見ていたらHが「これなーに」と 聞く。好機とばかり、折り畳みの碁盤に白黒の碁石をHの前に並べて、石を指で つまんで打って見せた。Hは大変関心持って、石を碁盤に並べ始めた。ごけから 全部の石を出して盤面を覆いつくした。その日以来、碁石・碁盤はHの絶好の遊 び道具になった。そのうち興味を持ち出したら、四つ目殺しでも教えようかと思 っている。何ごとでも、興味を示したときに与えるのが一番だ。押しつけるのは よくない。アルファベットにしても、ピアノに書いてあったAPOLLOを見て「これ なーに」と聞いたときから始まり、運良くアルファベットのボードが見つかった ので、何らの押しつけなしに覚えたのだ。
◆これも、テレビでゴルフを見ていたときのことだ。「あれなーに」と聞くので「ゴルフだよ」と教えて、居間の書類用のプラスティック製キャビネットからゴルフのカラーボールも持ってきてHに示し、これがゴルフボールだよ。小さいボールだねというと、Hがとことこ居間へ行き、白いゴルフボールを持ってきた。何のことはない、例のキャビネットからゴルフボールを持ってきたのだ。プラスティック製のキャビネットで透き通っているので、日頃から、そこのあることを見ていたのだ。
◆ ゴルフボールで遊ぶかというと、野球ボールがいいと答えた。
◆自分の家に帰るときには、「ばーば、送ってくる?」と尋ねて、ばーばに必ず送ってもらう。娘も一緒のことだし、妻が途中で帰ろうとすると、あそこまでとだだをこねる。そこまで行くと「もうちょっとだけ」と手を離さない。結局マンションまで送っていくことになってしまうらしい。