僕の日記1955年
1955年12月18日土曜日 天気:起床:時分 就床:時分 
 

12月18日

映画「あすなろ物語」見学

―ずいぶん日記をご無沙汰したな。

―うん、もう三日書かなかった。

―どうしたんだ。

―それが試験があったんで・・・

―それで書くひまがなかったって言うんだろう。

―そうなんだ。書きたくなくって書かなかったわけじゃないんだ。

―ふん、それは、当てはまらないね。意志の問題なんだよ。どうしても書こうという 意志さえあればだ。

―しかし、僕は日記というものに義務付けられたくないんだ。毎日義務的に点けるの は、嫌なんだ。

―それは、君のいい訳だ。日記というものは、その日その日の君の姿を映していくも のなんだ。つまり、君の影なんだ。スリラーでない限り、影のない男ってものがある はずがない。

―しかし、書くものがないのに、やたらに書けるかい。光がないのに影をつけろ、 たって無理だよ。

―ところで、君は光を一日も感じなかった日があるってでも言うのかい。影のなかっ た日があったって?それは笑いもんだ。人間の心ってものは、空虚である時は一秒も ないんだぜ。眠っている時は別としてだが・・心を、君は日記の上に記せばいいん じゃないか。

―・・・・・

―君はそれができないんだ。君は君の心をさらけ出すのを恐れている。人から覗かれ るって気持ちもあろう。それ以上、君が心配しているものは、君のペンの力が君の君 自身で複雑だと思っているその君の心を表すことができないと考えているんだ!そん なことはない。しようと思えばできないことはない。これまでの日記にしても、皆君 の心のその上にある。浮ついた日記なんだ。君は日記の革命を起こすべきだ。

―君は人の日記のスタイルに干渉しようと言うのかい。君はその人を最も表しやす いスタイルを選んで書くというのに反対するつもりなのか。もちろん、僕のスタイル が、僕にとって完全だとは言わないが・・・これまでの日記にしても僕の精一杯を書 いているつもりなんだ。君が欠点を突こうとした言葉はそのまま君の欠陥を突いてい ると思うんだ。君は私の日記を自由に見る権利がある。そのため、要らぬお節介まで するんだ。君は絶えず理想じみたことを言う。そうして絶えず、高い所にいようと 思っているんだ。そして僕をはじめ、世の中を見下ろしていると思っているんだ。 「世間の馬鹿らしさに冷笑を与えているんだ。」と自分では思っているらしいが、そ れでどんなご利益があったんだい。・・・つ双方とも、感情的になってしまったね、 もうこれ以上議論を交わすのも面白くないね。しかし、僕も君と話をして学ぶ点が多 かった。また、いつでもいいからやって来てくれたまえ。

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