僕の日記1955年
1955年12月20日月曜日 天気:雨 起床:7時30分 就床:1時00分 
 

12月20日雨

―まったく今年も押し迫ってきたね。

―うん、残すところ後十日か ―君も来月五日で16だろう

―うん、そうだ。ところで、今日武者小路の「愛と死」を読んだんだが、氏は16で初 恋をしている。その初恋は破れるんだが、それによって氏は非常なプラスの影響を受 けたという話だ。

―自分も16だから恋でもしようというのか。

―そんなことじゃない。恋というものは始めようとして始まるものじゃないはずだ。 次第に両性が引き付けられる。そういうものだと思うんだ。未経験者が二人で空想し たって始まらないが・・・

―ところで、読後感は・・

―うん・・・あの文章の形態と言おうか、僕という一人称を使って、作家仲間のこと から話を始めるのは、前にやはり氏の『友情』を読んだが、それと大体同じなんだ。 前のはやはり悲劇として終わるんだが、まあ、ちょっと非現実的な会話等が多いよう に思った。それほど、立派な作とは、思わないね。あまりあっけなさ過ぎるんだ。そ して、僕というものの性格があまり表われていない。先に読んだモームの『お菓子と 麦酒』なんかの僕はかなり性格的に押し出されていたようだった。

―君もずいぶん、読書したようなことを言うね。

―うん、しかし、僕の読んでいるのはほとんど数えるほどしかないんだ。図書館を利 用したりして盛んに読もうとするが学業と両立させようとしても、なかなか容易には 読めない。

―冬休みに読めるんじゃないか。どんな計画を持っているんだ。

―それが、学校の図書館は、本の貸し出し禁止に、今なっているし、さしあたり購入し てまで読む余裕もないし、まあうまくいって、前に買っていた文学入門、英文学入門と か、市の図書館にでも行ってせいぜい3,4冊ぐらい読めると思っている。そんな計 画的なことはない。

―ふん、そうか。君は読後感をなるたけつけたがいいな。

―君との会話が、そのまま読後感だ。

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