タイガー・ウッズ、全英オープンで優勝、史上最年少、最短期間で、史上5人目のグランドスラム達成
六月の全米オープンゴルフで、2位との差15という101年振りの新記録
で優勝したとき、とある米国のゴルフのwebsiteのコラミストは、そのコラムをこんなジョークで始めていた。
「全英オープンの主催者は、この度、この7月に開催予定の全英オープンをキャンセルすることに決定し、すでに優勝カップを、タイガー・ウッズ宛て、荷造りのうえ、発送した。」
そのくらい、15ストローク差での、ぶっちぎりの優勝は衝撃的だった。しかし、このジョークを、ジョークに留まらせなかったのだから、今度の衝撃は、もっとすさまじい。7月23日に終わった今年の男子ゴルフのメジャー第三戦、第129回全英オープン選手権で、そのタイガー・ウッズが、またしても2位との差8ストロークという大差で危なげなく優勝し、全世界のゴルフ関係者を完全に脱帽させてしまいましたね。もう、何も言うこともない、どうしようもない、素直に脱帽するよりないというのが、関係者や他の選手の思いではないでしょうか。
優勝スコアの19アンダーパーというのは、セントアンドルーズ・オールドコース(全長7115ヤード)での全英オープンの最小スコアの記録ですし、これで、ウッズは、1997年のマスターズ、99年の全米プロ、今年6月の全米オープンに続くメジャー制覇で、1966年のジャック・ニクラウス以来、34年ぶり、史上5人目ののグランドスラム達成です。
先週の木曜日7月20日から始まった全英オープンでのタイガー・ウッズのプレイぶりを、今回もスカパーでスタート時点からフィニッシュまで通して見る機会があったのですが、2位以下の選手が、ポットバンカーやすさまじいラフで苦しんでいる中にあって、タイガー・ウッズだけは、115もあるバンカーに一度も入れることなく、たまたま入れたラフからも、にこにこ笑いながら、グリーンの空くのを待ち、ちゃんとグリーンをとらえ、ほとんどボギーを出さないプレイを続けるのですから、別次元のゴルフをやっているようにさえ見えたものでした。
スコアは初日から67,66,67,69と安定し、4日ともアンダーパーにまとめました。条件が厳しくなるほどウッズに有利と言われたのですが、今回は4日ともまずまずの天候が続き、差が付けにくい中でのプレイだったにもかかわらず、2位以下を8ストロークも離してしまうのですから、タイガー・ウッズがいかに別格の存在であるかを示しています。2位以下のスコアは、結構接近しているのです。2位タイのエルスとビヨンが11アンダー、4位タイのレーマンとトムズが10アンダー、6位のカプルズが9アンダー、8アンダーの7位タイにエージンガー、フルケ、ロバーツ、クラークの四人が並び、1ストローク差でひしめいています。
ウッズは、飛距離が出る上にコントロ−ルが正確なティショットに加え、フェアウエイからの距離感が抜群で、大方のホールで楽々パーオンに成功します。短めのミドルホールではワンオン、ロングホールではツーオンしてしまいます。グリーンに乗ると、短めのパットをまず外すことがないばかりか、かなり、長目のパットも、タイガー・ウッズが打つと、ホールに吸い込まれるようにして入り、バーディを稼ぎ、パーをセービングしてしまいます。4日間を通して、ボギーが3つというのも、いかに安定したゴルフをしているかの証左です。
最終日一緒に回った世界ランキング2位のデュバルもお手上げの表情でした。彼とて、これまで米ツアーで11勝もした強者ですが、タイガー・ウッズの前では影が薄く、結局、引き立て役の損な役回りを演ずる結果になってしまいました。序盤では、2、3番で連続バーディ、6,7番でもバーディを奪い、一時は14アンダーとし、前半1バーディだったウッズに3打差と迫ったのですが、バックナインに入り、12番で3パットし初のボギーを出すと、13,15番と連続ボギー。致命傷は17番(パー4)。第2打をポットバンカーに入れ、ダブルパーの8を叩き、2位の座からも脱落、11位タイまで転落してしまったのです。これもウッズの迫力に蹴落とされた結果と言うべきでしょう。
一方、ウッズのほうはと言えば、前半、3打差に迫られたときには、さすがのタイガー・ウッズも少々焦るかなと思ったものでしたが、いささかの動揺もなく、後半に入ると、ウッズは、計算していたかのように、10,12,14番と1ホール置きに、バーディを奪取。デュバルとの差を広げていき、上がってみると2位以下に8ストロークの大差をつけているのですから、技術のみならず、精神力も頭抜けています。
今回の会場となったセントアンドルーズ・オールドコースは、ゴルフ発祥の地。ラフはきつく、フェアウエイは狭く、アンジュレーションは複雑を極め、その上、ポットバンカーがいたるところに不気味な口を開いています。今年は、天候に恵まれ、名物の強風が吹き荒れることはなかったのですが、雨が少なかったせいでフェアウエイやグリーンはかちかちに乾燥しており、ボールのコントロールは至難の業です。ちょっとコントロールが甘いと、たちまちラフやクリークまで転げ込み、ポットバンカーの餌食になります。このバンカーにつかまり、やむなく後ろ向きに出していたプレイヤーは一人や二人ではありませんでした。全米オープンに負けず劣らずの厳しい設定であったことに間違いありません。
ところが、セントアンドルーズ・ゴルフコースも、タイガー・ウッズの前では、ごくありふれたゴルフコースに変貌してしまい、にこやかに迎入れてしまったようです。本命中の本命と世界中から注目され、やすやすと四冠を許すまじということで、全選手から必死のマークを受けたにもかかわらず、そのプレッシャーの中で、まったく乱れることなくプレイし、新記録スコアで、グランドスラムを達成してしまうのですから、手の打ちようがありません。これ以上難しい設定をしたら、他のプレイヤーとの差が逆にますます付いてしまいそうです。
プレイぶりを見ながら、ほとほと感心するのは、信じられないぐらいのスピードで、クラブを振るのですが、フィニッシュがぴしっと決まっており、微動だにしません。見えないほどのスピードでクラブを振りながら、ピンポイントのねらい所にボールを運ぶのです。その技量があってのことでしょうが、どのホールも、なるほどと思わせる攻め方を見せます。安全第一と本人が言うとおり、決して無理をせず、ティーショットも、ドラーバーだけでなく、アイアンやスプーンなど、多彩なクラブを駆使して、安全な場所に運ぶのです。この考える力、攻めの構想力が、さすが世界一のプレイヤーにふさわしいと認めざるをえません。見ていて惚れ惚れしてしまいます。
ゴルフ発祥の地、セントアンドルーズ・オールドコースでの、34年ぶり史上5人目のグランドスラマーの誕生です。これ以上ふさわしい舞台は他にないでしょう。
前回も書きましたが、今回の勝ちっぷりを見ていますと、本当に死角がない強さなので、これからもありとあらゆるゴルフの記録を書き換えていくことでしょう。とにかく、3年半前プロになり、出場した80数回の試合の4回に1回の割合で勝ち、最近出場の20試合では2回に1回以上の割合で勝ち、すでに生涯獲得賞金額で、史上トップの記録を一戦ごとに塗り替えつつ驀進しているのですから、異次元の存在というか、アマを相手に戦うプロの強ささえ感じられます。他の選手に、ハンディを上げる必要があるのではないかと、試合後に質問した記者は、半分本気だったのか知れません。
彼のプレイぶりを、例えば370ヤードも離れたかちかちのグリーンにワンオンしたり、難しいラインのパットをねじ込んでしまうプレイぶりを見ていると、人間の能力のすごさ、人間の開かれた可能性というものへの信仰が呼び覚まされ、タイガー・ウッズと同時代に生き、そのプレイぶりをリアル・タイムで見られることの幸せを感じます。
これで、24歳にして、最年少、プロになって最短期間でのグランドスラムの達成です。ニクラウスの26歳、4年間でのグランドスラム記録を3年間で達成しました。これまでグランドスラムを達成したプレイヤーは、ジーン・サラゼン、ベン・ホーガン、ジャック・ニクラウス、ゲーリー・プレーヤーの4人しかいなかったですが、タイガー・ウッズは早くも仲間入りを果たしたわけですね。彼なら、早晩間違いなく5人目のグランドスラマーになることだろうと前回コメントしたのでしたが、たちまち成功してしまいました。この調子なら、ニクラウスのメジャー優勝18勝へのチャレンジも夢ではありませんし、年間グランドスラムも期待できそうです。本当に大きな楽しみです。
全米プロ選手権にも世界の注目が集まることでしょう。
それにしても、日本選手は大挙して出かけながら、決勝ラウンドに進んだプレイヤーは3人きりで、米山41位タイ、丸山55位タイ、細川70位タイという結果はやはり淋しいですね。日本から、タイガー・ウッズ並みのプレイヤーの出現を期待するのは無理なのでしょうか。
ところで、全米女子オープンでは、オーストラリアのウエッブが念願の初優勝を果たしました。これでメジャー3勝目。今期絶好調で、女ウッズの異名を持つウエッブが5打差での順当勝ち(5勝目)といったところ。1995年に米ツアーに参加して以来これで21勝のハイペース。2005年にツアー参加年数が10年になれば、殿堂入りの資格も得たことになります。