日記の部屋1963(9)/Diary1963(9)

(2000/4/16開設:since April 16,2000)
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(2000/5/10掲載)
年月日 曜日 日記本文
1963.7.27 Saturday ◆土曜日。全く言葉に甘えて今週は今日までずうっと休んでしまった。でもここであわてて一日二日早く出勤し始めたところで、後で後傷が痛んだり、そのためまた休まなければならないようなことになるかも知れないことを考えれば、他の人には迷惑をかけたとしてもやむを得なかったと言わなければならない。迷惑をおかけした分はこれまでの静養で貯えたエネルギーで補うべく努めることである。すっかり元気になった。最後の休みを楽しくすごそう。
 
◆昨日、父から端書があった。母上の経過はいいらしい。主治医曰わく、こんなによく手術ができたことは初めてで、こんなに早く退院できたのも滅多になかった、とのこと。本当に良かった。父は7月30日に島原を発って8月7日頃東京に着く予定らしい。できるだけの歓待はしたいけれど勤めとの兼ね具合でどうなることやら。

◆8月2日金曜日の東急ゴールデンコンサートの招待券を手に入れた。2枚。都合をつけて行きたいものである。

◆昨日”囲碁”を買ってきた。読みだしたらなかなか手放しがたく、もう大半は読んでしまった。読んだとはいえ、碁の本などというものは一回軽く読み通したぐらいでは少しもものの役にはたたないものなのである。二回も三回も読み直して碁盤にでも石をを並べてみるぐらいの熱心さがなければ、碁の本を買ったからと言っても、自分の棋力の方にはどうやら何の影響もないらしいのである。

13:40:00
◆7月も27日。昨日今日と大変暑い日が続いている。まさに盛夏である。そろそろこの部屋にも日が射し込み始めた。暑くなってきた。どこかに引っ越さなければならない。午後からは読書をしよう。サミエルソンのEconomicsとロシア文学の短編集、ロシア語の文法書。この部屋を抜け出すまではフランス語の文法書を。

1963.7.28 Wednesday ◆今夜は長い休暇の最後の夜だ。もう12時を過ぎてしまった。明日からまた元のように毎日毎日満員電車にもまれながら役所と下宿との間を往き来する一介の安サラリーマンに逆戻りすることになる。
 それにしてもほんとうにこの休みは良かった。十分にエンジョイしたと思っている。今日も僕は悠々と朝寝坊した。起き出したのはお昼近くだった。朝ご飯でも食べようかと何となく上りの国電に乗った。荻窪で降りようとしたら、確かに僕の知っている女の子が乗り込んできた。誰だっけ、と思いながら彼女の背後でどうして話しかけようかとしばらく戸惑っていた。車掌が検札に来たのは好都合だった。彼女の後ろから定期券を覗き込むと荻窪ー目白となっている。間違いない。岩間嬢である。岩間克子、日本女子大二年。克子は小粒でピリリと辛いとかなんとかM会合唱団の会報にいつだったか載っかっていたことがある。
 そこまでわかりながらそれでも何となく話しかけるのが躊躇された。近くに他の女の子が立っていたせいでもある。やっとこさで話しかけたのは電車が新宿駅をスタートしかけた時だった。僕が彼女の右側の空いた吊り輪に手をかけて彼女の右肩を軽く叩きながら”岩間さんでしょ”と言うと驚いて振り向いた彼女の顔が”まあ”という小さな叫び声とともにほころんで”お珍しいわ”
 本当に小柄でまだあどけないような笑い顔だった。目が細くなって口元にえくぼができる。話題はもっぱら合唱団のことに終始した。今日もその合唱団の会報を作るために本郷まで出かける途中とのことで、お茶の水駅まで話しながら行って、別れた。
 去年の夏の写真を送ってくれるという。是非M会の練習にいらしてくださいと彼女は名残惜しそうに何度も言ってお茶の水駅の階段を登っていった。今からご一緒に東大までということだったけれどやっぱり照れくさいのでよした。
 四年生の連中はほとんど銀行に就職したらしい。8月19日から野尻湖で合宿をやるのだけれど参加者が100人もいるのよ。古い人達が新しく入ってきた人の中に紛れ込んでしまうみたいで、練習の時なども捜さなければならないくらいなの。etc.etc. M会の話を聞くのはずいぶん久し振りのことだ。今年1月12日の新年会に出たっきりでその後文集作りの時時たま顔を出したことがあるくらいだ。ずいぶん様子も変わったことだろうと思う。こんな話を聞くとなんとなく懐かしくなる。去年の夏の合宿のことなどを思い出した。その時の色んな事ども。色んな人のことなども。
◆お茶の水から新宿に引き返して伊勢丹で買い物をし、推理劇場で”リバティバランスを撃った男”を見た。いい映画だと思う。ジョン・フォード監督映画でジョン・ウエインとジェイムス・スチュアートが主演。ハリーの役をやった女優も僕の好きなタイプの女性だった。
 ジョン・フォードの映画には何とも言えないいいムードがある。詩情とも言ってよさそうな雰囲気がある。それが見ている側にも伝わってきて何となく楽しい気分になる。人間の善意というものへの信頼とでも言うべきものが大らかに歌われている。どんな映画にもジョン・フォードはユーモアを忘れない。このことは観客を愉しませることを忘れないと言うことに通じている。観客は銘々大いに愉快そうに映画を見ていた。アクション場面の緊迫感や盛り上げのうまさにも年季が入っていて我々観客としては固唾をのんで画面に食い入ることになる。
 8時半頃帰ってきた。夕刻5時頃M.Wさんから電話があったよし。明日にでも電話しよう。ではBon nuit.
<1:05:00>
1963.7.30 Tuesday ◆昨日から出勤。昼食を小島さんから驕って貰った。全快祝い。8時頃M.Wさんに電話。31日にデートの予定。楽しい電話であった。
◆重工業課に出かけて秋山、庄野らと話す。日本ライン下りの写真や秋山の撮った写真ができていた。ビールを飲む。
◆今日昼食は千代田に同期生23人が集まってくれての全快祝い。
After that, Iwent to the cofee shop "Ran" with Okabe,Yokobori and Ono. There we talked about many interesting things. 
From 6:00p.m. ,we had a reading meeting at Kyosai Kaikan. 10members gathered.
After that the four of them including me went to a Beer Garden in Hibiya Park. We had a very good time,talking many amusing stories and drinking a big juck of Beer.
1963.8.1 Thursday ◆今日は8月1日。外は夜来の雨。涼しい朝だ。静かである。散髪に行こうと思って早く起きた。
◆昨日暑中見舞いの葉書と名刺を注文した。8月4、5日は暦の上では立秋のはずである。葉書は5日にはできるという。とかくこうした類の挨拶状は出す時期が難しい。病院に入院していたために少々時機を失した感がないではない。
◆東京駅の南口交通公社に待ち合わせてM.W嬢とデート。彼女は28日まで四阿高原での合宿に行っていたせいで相当日に焼けている。でもやはりいつものごとく手足にしても身体全体にしても実にほっそりしている。新宿でご飯を食べ、荻窪でコーヒーを飲んだ。
 実は彼女今日の午後10時に京都に発つ。京都と言っても天橋立に近い田舎の町である。そこで僧院にこもるらしい。いろいろと盛りだくさんのscheduleがあるらしく一度東京に戻ってからまた富山宇奈月など北陸などを回るらしい。9月1日ぎりぎりまでに周遊券を使わなければならないと言うわけで、南口交通公社に出かけたのも使用開始日を8月1日付けにして貰うためだった。
◆N.S嬢に電話。彼女金曜日に旅行に出かけるらしい。例によってなかなかに楽しい電話が続いたけれど、今週中にデートでもしようと考えていた目論見は外れてしまった。でも英会話を熱心にやりましょうということになって、研究社の"American Spoken English"のelementary courceを使い隔週毎に覚えっこをすることにし、その詳細は来週にいつか会って話し合おうということにした。
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