夕刻、やや薄曇りがかった空に、雷鳴が突然鳴り渡るや、雨が沛然と降ってきた。トタン屋根にたたき付けるように降り注ぎ、たちまちにしてあたり一面を飛沫を被った甲板のように水浸しにし、薄墨色の霧の中に覆い尽くしてしまった。ややあって雨は止んだ。風が涼気を帯びて快い。
その中で洗濯を始めた。一週間分の洗濯物はみかんの段ボール箱に一杯で溢れるほどである。やっとすすぎ終わって、干そう思って外へ出た途端である。
先ほどの勢い以上の激しさで大粒の雨がどどっと滝のように降ってきた。またしても落雷。稲光であたりが一瞬真昼のように明るくなる。青白い壮絶な明るさである。雨に叩かれている庭一面がくっきり光の中に浮かび上がると見るや、途端に闇の中に消え去る。雷鳴が落ちてくる。樋に溢れた雨水がグラスファイバーの屋根の隙間から逆流してせっかく干した靴下の上に注ぎ始める。
部屋にとって返すと開けっ放しになった窓から雨が遠慮なく降り込んで畳の上まで濡らしている。大急ぎで窓を閉め、雑巾がけをやっていると、出窓の鴨居と窓枠の隙間から水滴が噴き出し始めた。手ぬぐいを詰めてもたちまちびしょ濡れになってさかんに水滴が落ち始める。空き缶を下に置く。
カンカンカンと連続音が何となくあわただしい。雨の勢いはなかなか衰えそうにない。電灯が消える。アッと暗闇の中でうろたえる。幸いすぐ点く。
雨の降り止まぬ中でトーストや缶詰を食べる。そのうち雨も小止みになり、今ではほとんど止んだ。午後8時50分。窓からは涼しい風が吹きこんでくる。夜景が何となく新鮮な感じがする。
◆(原案)
私の心の中で
軟体動物がけだるく反転する。
ぬるぬると海のように深い闇の底で
大きな頭と大きな足たこのような、
この得体の知れぬ軟体動物は
血に染まった鋭いくちばしを
その柔らかい肉の中に包み隠して
ピチピチと生気に溢れた
ピンクの姫鯛の偶然の訪れを
けだるく物憂げに待ちわびている。
◆欲情
私の心の中で軟体動物が反転する。
海のように深い闇の底で
大きな頭と大きな足を持った
このたこにも似た
得体の知れぬ軟体動物は
血に染まった鋭いくちばしを
ぬるぬると柔らかい肉の中に隠し込んで
けだるく物憂げに反転する
何ものかを待ちわびて
何ものかを待ちわびて
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